ピックアップレーサー記者コラム

SGV9、G1V18、通算V84の毒島誠にとって2024年は格別な一年であった。
戸田のボートレースクラシック(3月)、津のボートレース甲子園(7月)、住之江のグランプリ(12月)などを制し獲得賞金でトップに立ち、年間の最優秀選手に選ばれたからだ。
「ここで取らなかったら、ずっとムリかもしれない…」。そういう思いがよぎる中、初めて黄金のヘルメットを戴冠。自らを振り返り改善してきた道筋の確かさを証明したのである。

デビュー当時からの”メモ魔”は「書くことで覚えますし、次のヒントになることが多い」と語るが、それはそのまま変化成長する意志の表れ。今後も変わることがないだろう。

年があけ、2025年も勢いそのままなのが毒島誠。5月25日時点の優勝は次のとおりだ。
1月・桐生正月レース(イン逃げ)
3月・尼崎周年記念(イン逃げ)
3月・平和島周年記念(イン逃げ)
5月・桐生ゴールデンウィーク戦(イン逃げ)

賞金ランキングも4位につけリズムは堅調。となれば、優勝ラッシュを期待したくなるのは人情だろう。
ボートレース甲子園は2021年の第3回大会と第6回(前回)大会を制している毒島誠が、大会初の連覇を成し遂げるか大注目だ。

押しも押されぬ優勝候補筆頭格となるのが、京都府出身で滋賀支部の馬場貴也。
2003年11月に三国でデビューした馬場は、初1着と初優勝がびわこ水面だった。以来、びわこではV18 。内、2020年にはG1周年記念を、また2022年にはG2秩父宮妃記念杯を制している。直近のびわこVは昨年の正月レースである。

ヤング世代の頃はやや荒々しい攻めっぷりでファンを魅了し、時に波乱を演出していたが、そのスピード戦にターンテクニックが加わったことで一気に開花。2018年の芦屋チャレンジカップの栄冠につながったといっていいだろう。

多くのプロ、それも第一線級レーサーをして「馬場選手の旋回はなかなかマネができない。高速でキレがいいうえ、自在ですから…」と語らしめるほどのテクニックである。

ただ、それは単に身体的・能力的なポテンシャルがもたらしたものではないことを付け加えなければならない。
「ボートレースを支えてくれるファンの皆さま…」への感謝の心が「いいレース」を育んでいるのである。
そういう意味で、ボートレース甲子園にはハートを揺さぶられるものがあるだろう。
勝手知ったる地元水面を自由自在に滑走するイメージが7月、カタチになる!

池田浩二は、正真正銘のトップレーサーである。
通算優勝回数は98回。うちSGはV10、G1にいたってはV14と驚異的。最高峰のグランプリには昨年までで4年連続15回も出場。2011年と2013年には黄金のヘルメットを戴冠している。

そのレーステクニックの象徴として”代名詞”にもなった「ウイリーモンキー」をはじめ、センスやポテンシャルばかりが喧伝(けんでん)される傾向にあるが、実態は違う。レースに人生哲学を反映させる賢人なのだ。
年齢や経験、実績が幅を利かせるプロの世界に身を置きながら、誰もが力いっぱい勝負ができる環境を、公正で平等な境遇を心から望む賢人。それが池田浩二である。

ともすればコース取りは淡泊にみえてしまうが、そこには、与えられた番組や枠番を尊重する考えがある。また、ファンを惑わしたくないという気持ちがある。それを前提に厳しく勝負したいのだ。

そんな美しくも頼もしいレース哲学を愛でるのがヤングファン。どこか憧れにも似た感情が沸くのであろう。いつしか、多くが「イケコー」と称するようになり、本人もそれを喜んでいる。
コース不問で自在。型があるようで型にはまらない巧みなレースの源泉にふれてみたいびわこの戦いである。

峰竜太は、ボートレース甲子園第2回大会(三国)の覇者である。
3コースからまくり差し接戦に持ち込むと2周1マークで決着をつけ栄冠を手にしている。
「展示でまくり差しと決めました。そこから100回くらいイメージしたんですが、それがカタチになりました」と振り返った逸話は今なお語り継がれている。
勝利するために必要な”自分を信じる力”を有するのが峰竜太。それがSGV6、G1V19、通算103につながっているのである。

昨年8月の唐津お盆レース以降優勝歴はないが、戦いの舞台びわこは好相性。2021年10月の周年を含めV5としている水面である。
圧倒的なスピードを生かした高速ターンをはじめ、研究し尽くしたうえに今なお進化を続けるプロペラ理論は他の追随を許さない領域だが、さらに求める高みに向かっているのが現状。「単に結果だけでなく、ほんとうの強さを求めたい」と語る背景にある精神性にも注目したい。

それは、たとえ苦境にあってもそこから立ち上がる力であり、年齢を重ねることによる心身の変化を受け入れ、そのうえでベストパフォーマンスを演出するにはどうしたらよいかを追求する姿勢を指している。
その表れとしての走りを注視したいものだ。

「責任あるレースをしたいです」。山口剛は時にこういう発言をするようになった。これまでの「真剣勝負します!」に加えてである。

「真剣勝負」と「責任」はまったく相反しない。むしろファンあってのレーサーであるという自覚を二重の意味で確認しているといっていいだろう。

ただ、変化がないわけではない。
レースぶりに”巧みさ”が加わっている。より流れを重んじた走り方が加わっているといった印象だ。

その効果は、2025年前期(集計は2024年5月~10月)と後期(集計は2024年11月~2025年4月)データにあきらかである。

1コース1着率 前期81.4% 後期75.0 %
2コース1着率 前期25.0% 後期22.2%
3コース1着率 前期10.5% 後期20.8%
4コース1着率 前期11.5% 後期23.0%
5コース1着率 前期 5.2% 後期16.6%
6コース1着率 前期 0.0% 後期 0.0%

3コースから5コースの1着率が飛躍的にアップしているのだ。これほど明確な変化を見逃すわけにはいかない。
インが強くなったとはいえ、センターから5コースまでが利くびわこだからこそ、押したくなるのが山口剛だ。

G1レースの優勝は18回、SG4冠としている桐生順平は関東を代表するプロレーサー。ボートレース甲子園では福島県代表として出場することになる。

「応援だけでなく、厳しい叱咤激励などどんな声も自分にとっての励みです」。
こう語ったのは、2017年の第17回グランプリ優勝直後。「ファンの皆さんは気になるからこそ発信してくれていると思っています」という考え方に強さの秘密の一旦があるだろう。
逆境をも自らの力に変えることのできる人物なのだ。

2024年は戸田の周年(6月)と戸田のボートレースダービー(10月)を含めV3だったが、2025年は一般戦ながら5月末の段階でV3。流れは来ているといっていいだろう。

その持ち味であるコースを選ばない戦いぶりは過去1年ほど(2024年6月1日~2025年5月26日)のデータが証明している。覚えておきたい。

1コース1着率77.3% 3連対率94.2%
2コース1着率22.5% 3連対率74.0%
3コース1着率34.2% 3連対率71.2%
4コース1着率17.2% 3連対率72.3%
5コース1着率22.5% 3連対率64.3%
6コース1着率 0.0% 3連対率60.0%

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